




天然の生薬を練った小さな粒に銀箔をはりつけた「仁丹」が生まれたのは明治中期。医療環境が整っていなかった時代に、生薬を手軽に持ち運び、長期保存を可能にしたのが銀箔のコーティング技術でした。この中身を「包んで守る」技術をさらに進化させ、森下仁丹が生み出したのが、いま世界が注目するシームレスカプセル技術なのです。
シームレスカプセル開発のきっかけは、液体の成分をカプセルに閉じ込めたいという思いから。継ぎ目のあるカプセルでは、中の液体が染み出してしまうため、継ぎ目のないカプセルをつくることが必要でした。開発チームは、葉からすべりおちる朝露をヒントに、この難題をクリアします。「水滴は表面張力で丸くなる。この力を利用できないか…」。その発想から、カプセルになるゼラチンを外側に、中身の液体を内側にして、同時に落とすと表面張力が働き、丸い形のカプセルが出来上がったのです。中身の液体を包んで継ぎ目のないシームレスカプセルは、当時の特許を取得しました。

さらにシームレスカプセルは、ビフィズス菌の研究者である光岡知足東京大学名誉教授と出会い進化します。「ビフィズス菌は胃酸に弱く腸まで届けることが難しい。ビフィズス菌に鎧でも着せられないか」。そんな願いを実現したのが、耐酸性の皮膜を2重にしたシームレスのダブルプロテクトカプセルです。特許(カプセルとその製剤特許(方法特許第3102990号/特許第4184278号))も取得するこの技術によって、生きたビフィズス菌を腸まで「届ける」ことが可能になったのです。
今では、食品分野のみならず、レアメタル回収や経口ワクチンにもシームレスカプセル技術を応用させようと、さまざまな研究開発が進んでいます。


シームレスカプセルは、携帯電話やパソコンの電子部品に使用されるレアメタルの回収の技術としても開発が進められています。レアメタルを体に取り込む微生物をカプセルに包んで、レアメタル回収に活用すれば、低コストでリサイクルが可能になります。この他にも発展途上国でも手軽に利用できる経口ワクチン、自然にやさしいシロアリ駆除、絶滅危惧種を守る人工種子など、あらゆる分野で社会に貢献できる技術への応用開発が進んでいます。
